予防歯科って簡単? 難しい? 予防歯科への長い道のり

予防歯科を実践してみて

みなさんは歯医者ってどんなイメージですか?

歯医者の仕事はなんですか?って聞かれたら、なんて答えますか?

私が地元の福井で開業して10年が経った頃です。むし歯や歯周病の患者さんが後を絶たず、少しでもいい治療をして歯を長く保たせたいと、毎日治療を繰り返していました。でも、治療をしてもしても、治療は減りません。治療は新たな治療を生み続け、この先もずっとこの状況が続くと思われ、先が見えずに疲れていました。

ちょうどそんな時期に、久しぶりに大学時代の友人に会って愕然としました。治療の様子が福井とは全く違いました。子供から大人のむし歯、歯肉炎から歯周炎、根っこの消毒や入れ歯の治療に至るまで、すべての治療が友人よりも遙かに多い! 福井では圧倒的に治療の数が多く、治療ばかりを繰り返していることに気付きました。

地方と都会に差があるとは言え、感覚的に10倍もの治療をしているように感じました。これが本当に患者さんのためになってるのか? 自分のしていることに意味があるのか? 根本が揺らいで毎日悩んでました。ダメになるのが分かっているのに治療を続けるのか・・・自問自答の日々が続きました。

このままでは福井の歯科医療はドンドン遅れるばかりです。あきらめて考えることを辞めてはいけない。丁寧に治療するだけでは歯は守れない!
根本から方針を変えようと決心しました。

治療中心の歯科医院から、予防中心の歯科医院へ方針を変更する!

予防管理型歯科医院への長い道のりのはじまりです。

The way to go

歯科医療の地域格差

福井で予防歯科に取り組んでみて、やっぱり難しいって感じます。都市部や他の県と同じようには予防を進めにくいですね。難しいことや反省も多々ありますが、治療を繰り返していた頃より、やり甲斐があり充実感があります。

福井県の歯科医療は全国的に見ても最下位のグループに属します。なぜそんな事が起こるのかというと、理由は簡単で、歯科のある大学が近県にはないからです。近くに歯科の大学がないと言うことは、単純に歯科医師と衛生士の数が少なくなるので、歯科医院の数も少なくなります。

また、大学があれば社会や地域に対する啓蒙活動によって、地域の歯科に対する文化的レベルが上がるのですが、そういう機会からも縁遠くなります。歯科の知識に触れる機会が少ないので、いわゆるデンタルIQが低くなってしまいます。

歯医者は痛い時に行く。悪くなったら行く。歯を削って詰めたら治った=おしまい。予防とは真逆の状態なので難しいです。

歯科に対する知識や関心が少ないということが、予防をさらに難しくしています。

知識は力なり 予防をするには知識が大事

歯科医師や歯科衛生士、その子供たちには、むし歯や歯周病がほとんどありません。私達は、それらを確実に予防できるからです。コロナ禍では、みんながウィルス感染対策をしたことで、毎年猛威を振るっていたインフルエンザの発症は激減しました。細菌やウィルスなどの感染症は原因と対策が分かれば、予防はできると言うことです。

歯科医療に携わる私たちは、むし歯や歯周病がなぜ起こるかの教育を受けています。どうするとむし歯になるのか、どうなると歯周病になるのかを知っているから、確実に予防をすることができるのです。丸見えの罠にかかる人はいません。知識のある人にとって予防は簡単なことです。

むし歯や歯周病になる、ならないは、病気に対する知識の量で差が出るのだと考えました。

それなら患者さんにも、むし歯や歯周病の知識を持ってもらえばいい。

患者さんには「なぜ、むし歯になるのか」「なぜ、歯周病になるのか」を知ってもらう必要があります。どうやって治療するか、ではなくて、どうして病気になったか、を考える方が予防にとって大切なことだからです。

知識こそが病気を予防するのに絶対に必要な力です。

人の考え方を変えるのは難しい

予防歯科を実践する際に、最大の難関がこれです。本当に難しいです。

知識を持ってらっても、これができないと失敗します。

病気の治療法を説明することは、それほど難しいことではありません。患者さんに適応する治療法の中から、予後が良さそうな2,3の方法を説明するだけです。ちょうど、家電の説明をして買ってもらうのと似ていると思います。

次に、病気の原因や予防について患者さんに説明すること。治療法を説明するより少し難しいです。生活習慣の中にある原因を見つけて、それに対する適切な改善法と予防法について説明します。選択肢が増える分、難しくなりますが、知識を高い方から低い方へ流すことなので、学校で勉強を教えるのに似ていると思います。

実際に予防に取り組んでもらうとなると、一気に難しくなってきます。

治療は患者さんが最初から望んでいることなので、患者さんが望んでいることを提供するだけです。患者さんは特に何も努力する必要はなく、必要な回数通院するだけで終わります。

予防は患者さんが望んでいることとは違うので、まず、患者さんのモチベーションを上げる必要があります。予防に関心を持ってもらい、「予防したい」という気持ちを持ってもらうこと。予防を始めてからは、「予防したい」という気持ちを持ち続けてもらうことは、かなり難しいです。これがずーっと続きます。

人間、痛いこともなくなり油断すると、つい楽な方に気持ちが傾きます。

さらに難しいのが、痛くもないのに歯医者に行くことが普通の事だと思ってもらうことです!

これまで「痛くなったら歯医者に行く」「歯医者は歯を削って治すところ」

という意識から、

「歯医者は歯の健康を守るところ」「病気にならないために行くところ」

という意識に変えること。子供の頃から植え付けられたイメージや考え方を変えるのは、並大抵のことではないです。本当に難しくて、教育を通り越して、もはやメンタリズム、宗教、洗脳といったイメージに近いのではないでしょうか?

みなさんにとっての歯医者は、どんなイメージですか?

歯医者の仕事は、「歯とお口の健康を守る」ことです。後悔する前に予防歯科の門を叩いてみてください。きっと世界が変わります。

治療のない未来へ

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