保険の銀歯と自費の白い歯 違いは見た目だけではありません

保険の銀歯と自費の白い歯、どっちを選んだらいいのか迷いませんか?

もちろん白い歯の方がきれいですが、見た目以外にも銀歯をおすすめしない理由があります。

見た目や金額だけで選んでませんか?

むし歯がある程度大きくなってしまうと、削って詰めるだけでは強度不足になります。
また、歯と歯の間にできたむし歯を、詰める材料で治療すると、歯と歯の間の接触が弱くなって物が挟まりやすくなることがあります。

材料の強度不足や物が挟まることが原因で、むし歯の再発や歯周病のリスクが高くなる場合は、白い材料を詰める治療では歯の寿命を縮めてしまいます。

そこで、型採りをして歯科技工士さんに模型上で歯の形を再現して治療することになります。
この時に、保険の銀歯か自費の白い歯のどちらにするのか、選択しなければなりません。

治療法に選択肢がある場合には、いつも自分自身を基準に説明しています。
「もし私だったらどの治療を選ぶだろう? どの治療をしてほしいだろう?」

自分を基準に治療を考えたときに、私は保険の銀歯を絶対に選びません。自分の家族にも絶対にしたくありません。
どこの歯医者さんでも、歯科衛生士さんでも、保険の銀歯にしたいと思う人はいないと思います。

自分にしてほしくない、家族にもしたくないような治療を、患者さんにはすすめるって・・・
そんなことはおかしいですね。私にとって銀歯の治療をすることは、決して嬉しいことではありません。

銀歯が、せめて悪くないものだったら、それほど悲観的にならずに済むのです。
理由を説明します。

銀歯をお勧めしない理由

保険の銀歯をお勧めしない理由にはいくつかあります。

銀歯を勧めない理由

  1. 見た目が良くない
  2. 銀イオンが溶け出して歯が黒くなる
  3. 細菌が付きやすく不潔、2次う蝕や歯周病の原因になる
  4. 金属アレルギーを起こすことがある

特にお勧めしたくない理由は3番目と4番目です。

1番目の見た目についてはご存知のとおりです。もし、見た目がコンプレックスになるような方にはお勧めしません。

2番目の理由も、主に見た目に関する理由です。銀合金はお口の中で少しずつ溶けて銀イオンを出します。この銀イオンが歯に吸収されると、銀歯の周りが少しずつ黒くなっていきます。後々黒ずんでくるのが気になる方は、銀歯を選ばない方がいいでしょう。

3番目は、すべての方に当てはまる、お勧めしたくない理由です。

銀歯の治療が必要になったのは、その場所がむし歯だったからです。そもそも、他の場所よりも不潔でバイオフィルムが付きやすかったから、むし歯になりました。

そこに、今までよりも不潔になりやすい銀歯を入れたらどうなるでしょうか?

実は、銀歯はピカピカ光っていますが、表面には細かい傷がたくさんあります。金属の研磨は、傷を細かくすることだからです。細かい傷には細菌が付着しやすく、バイオフィルム(プラーク)が作られ易い環境です。そのため銀歯はこれまで以上に不潔になり、むし歯が再発しやすくなります。

不潔になるということは、歯周病のリスクにとっても悪いことです。

むし歯や歯周病になりやすくなってしまう治療は勧めたくありません。

最後に、金属アレルギーを引き起こすことがあるので、お勧めしたくありません。特にアレルギー体質の方にはお勧めできません。

近年、アレルギー体質の患者さんが増えてきました。これまで以上に金属アレルギーになる患者さんも増えていくと思います。今は大丈夫でも、ある日突然、金属アレルギーになってしまいます。花粉症などと同じように、体の許容量を超えるとアレルギーの症状が出てきます。

大学病院など大きな病院の歯科に、「金属アレルギー外来」があるのをご存知でしょうか?
自分たちの治療が原因で起こった病気の治療をするための外来って・・・おかしいですよね?

まるで、病を処方する治療のようです。

発症する確率が少ないから問題ないという人もいますが、それもおかしいと思います。
新型コロナワクチン接種では、副反応やアレルギーの発症頻度はものすごく低いのに問題視されました。金属アレルギーも、歯科治療が原因で起こることが分かっているので、同じように問題です。

歯科治療の場合は、金属以外の選択肢があるのですから、リスクがある金属を選ぶ理由はないと思います。

銀歯の治療は、患者さんの健康を害する恐れがあるので、お勧めしたくないのです。

銀歯のメリット

では、銀歯を選ぶ理由は何でしょうか?

唯一のメリット?は保険が適応されて安いこと。経済的な理由以外に銀歯を選ぶ理由はないでしょう。

健康を取るか、経済を取るかの選択です。まるでコロナ禍の社会を見ているようです。

経済的な理由で健康にリスクがある金属を使用しなければならない、健康リスクはわかっているのに保険適応されている金属修復・・・保険診療の闇です。

最近、金属アレルギー以外の方も保険でチタン製の銀歯を作ることができるようになりました。金属アレルギーのリスクはほぼ皆無になりました。

ところが、チタンという金属は、銀歯よりもはるかに加工や研磨が難しい金属です。銀歯よりも表面が傷だらけで細菌が付着しやすいです。バイオフィルムや歯石が付きやすいので、歯周病のリスクはさらに高くなります。
もちろん見た目も銀色です。

銀歯大国 日本

ご存知かもしれませんが、これほどお口の中に金属があふれているのは日本人だけです。

なぜ、経済的にもそれほど貧しくない日本人の口の中が金属だらけなのか。

もし、むし歯が1本だけで、他はすべて白い天然歯だったらどうでしょう? 銀歯を選ぶでしょうか・・・

むし歯が多すぎるから、良くないとわかっていても安い銀歯にするのではないかと思います。たくさん治療しないといけないから、安い治療を選んでしまう。またむし歯になるだろうから銀歯にしておこう、というのは、実はリスクを先送りしているだけです。
将来、もっと大きな問題になって返ってきます。

考え方が間違っています。まず、むし歯にしないこと、むし歯の本数を減らすことを考えなくてはいけません。

日本と他の先進諸国で大きく違うのが、予防に対する考え方と取り組みです。

私たちは、むし歯は歯磨きで防ぐものという「歯磨き神話」を信じて、むし歯予防に歯磨きの指導ばかりを繰り返してきました。基本的に健康保険が予防には使えないことも原因の一つだと思います。

歯磨き神話が崩壊した現代でも、歯磨きだけでむし歯を予防しようと必死になっています。むし歯予防に歯磨き指導ばかりしている歯医者もたくさん残っています。歯磨きだけでむし歯を予防できる可能性は5%以下と言われているのにです。

歯磨き神話を盲信し続け、真実から目をそらし続けた結果、むし歯が多く銀歯だらけの日本人を作ったのではないでしょうか。

海外では、まず予防することを考えます。予防できる病気は予防するべきです。
考えられる最善の予防法と管理方法を指導し実践します。それでも病気になった場合には、最善の方法で治療します。

今までと同じことを繰り返している限り、私たちの銀歯は増え続けていくでしょう。

もし、銀歯にするときには覚えておいて欲しいことがあります。
最低限の治療をするのだから、最上のケアがなくては長持ちはしません。

まず、むし歯にならないように「正しいむし歯予防」をすること。
もし、むし歯になってしまった時には最高の方法で治療して、二度とむし歯にしないこと。

少しでも早く、日本もそういう世の中を目指すべきだと思います。

このブログを書いていて、ふと思い出したことがあります。20年以上前に僕が大学院生だった頃、ブラジルからの留学生にこんなことを聞かれました。

どうして日本人は治療ばかりするためにクリニックに来るのですか?

大学病院は最先端の治療をするところではないのですか?

日本人は金属で治療することがステータスなのですか?

大学院生だったときには意味がわかりませんでした。当時は外国から留学生が来るほど日本の歯科医療は優れているのだと勘違いしていました。思い出すと恥ずかしい限りです。

今、同じ質問をされたら間違いなくこう答えるでしょう。

「日本の歯科医療は遅れているからです」

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