歯周病予防に大切な2つのこと 知らないうちに重症化する怖い病気です
歯周病って何?
歯周病は放置してはいけない危険な病気です。
これまで何人もの患者さんが、歯周病を軽く考えて放置してきた結果、歯を失って悲しい思いをしてきました。
むし歯よりも、はるかに危険な病気なので絶対に予防しましょう。
その理由と予防法について説明していきます。
メニュー
- 歯周病ってどんな病気なの?
- 歯周病を予防するために必要な2つのこと
- 見逃してはいけない歯周病のサイン
- 口の中の出血は危険
- どうして予防が大事なのか?
歯周病ってどんな病気なの?
歯周病ってどんな病気ですか?
そう聞かれたら、なんと答えるでしょう。
歯周病って簡単に言うと「歯を支えている歯茎や骨などが壊される病気」です。
※歯の周りの組織を歯周組織(=歯肉、歯根膜、歯槽骨)と言います。
私は大丈夫! って思っているあなた
本当に大丈夫ですか?
歯周病はとても身近な病気で日本人の国民病と言われています。
30歳以上の人のうち、なんと80%が歯周病になっています。
どうしてそんなに大勢の人が歯周病になってしまうのでしょうか?
歯周病の初期段階では自覚症状がほとんどありません。
ある日、「歯がぐらついて硬い物が噛めない」「冷たい物がしみる」「歯茎からすぐに血が出る」などが気になり始めます。
知らないうちに進行していて、気付いた時には重症になっている・・・
本当にやっかいな病気です。
そのため歯周病は、歯を失う原因の第1位です。
しかも、失う時には数本単位で、たくさんの歯を一気に失うのでたちが悪いです。
あなたは大丈夫ですか?
手遅れになる前に、しっかり予防していきましょう。
歯周病を予防するために重要な2つのこと
歯周病予防に重要なのはこの2つです。この2つが、きちんとできれば歯周病は予防することができます。
(そこが難しいですが・・・)
歯周病予防というのは、適切なセルフケアとプロフェッショナルケアの両輪で成り立っています。
両輪のバランスを取り続けてコントロールしていくことが大事です。
※セルフケア:患者さんが家庭で行う毎日のブラッシングなど
※プロフェッショナルケア:歯科医院で行う専門的なケア
どうして、この2つが歯周病予防に重要なのかは、歯周病の原因について知る必要があります。
どのように歯周病が起こるのか、歯周病になる流れについてお話します。
1.歯周病菌が歯の表面に付着して増殖をはじめバイオフィルム(プラーク)を作ります
2.バイオフィルムが成熟して強固なバリアを形成します
3.バイオフィルム内の細菌が出す毒素で周囲の歯茎が炎症を起こします
4.炎症を起こした歯茎から出血しやすい状態になります
5.血液によって歯周病原菌の活性が高まり歯周病が悪化します
6.ドンドン深部へ入り込み歯を支えている骨を溶かします
バイオフィルムとは
バイオフィルムとは細菌の生活共同体です。
互いに共存関係にある多数の細菌が増殖した膜状のもので、細菌が外部の攻撃から身を守るために作ります。
排水溝などに見られるヌメリの正体もバイオフィルムです。
さて、炎症が起きないように、歯周病の進行を止めるにはどうしたらいいでしょうか。
上で書いた流れの、1番目や2番目の早い段階でブロックできれば効率的ですね。
プラークを溜めずに成熟させない=日々のホームケアを効率よく行う
バイオフィルムから毒を出させない=成熟したバイオフィルムを定期的に破壊(リセット)する
つまり、歯周病予防における歯科医院の役割は、
1.適切にブラッシングなどが行えているかのチェックをし、不足があれば必要なケアを指導して補強します。
2.専門的な技術を用いて、成熟したバイオフィルムを破壊し除去します。
これを繰り返していくことで、歯周病を予防することができます。
見逃してはいけない歯周病のサイン
こんなことが気になりだしたら、歯周病のサインかもしれません。
- 口臭が気になる、口臭を指摘された
- 朝起きると口の中がネバネバしている
- 歯磨きで血が出る
- 歯茎が赤く腫れている
- 歯が伸びて長くなった
- 歯茎を押すと血が出る
- 歯と歯の間に物が詰まりやすくなった
- 歯が浮いてるような気がする
- 歯並びが変わった気がする
- 歯が揺れてしっかり噛めない
1つでも当てはまる人は、早めに歯科医院に行って予防を始めてください。
4つ以上当てはまる人は歯周病が進行しています。すぐに歯医者に行って歯周病の治療を始めましょう。治療が終わってからも継続的に管理するようにしましょう。
これらの症状を見逃したり、放置したりすると、取り返しが付かなくなります。
歯を支えている骨は、一度破壊されて失ってしまうと元に戻せません。
継続的に管理しておかないと、また再発して骨を溶かされ、最後に歯を失ってしまいます。
歯周病は継続的な管理がとても大切な病気です。
歯周病菌は吸血鬼
口の中の出血は危険です
リンゴをかじって「歯茎から血が出ませんか?」ってCMがありましたね。
昔懐かしのCMですが、歯茎からの出血は本当に危険です。
どのくらい危険かというと、ケガだらけの体でドブ川に飛び込むくらい危険です。
それなのに、意外と大したことないって考えてる人が多いなぁって思います。
「あっ、血が出てる・・・」くらいに考えてませんか?
口の中には約400~700種類の細菌が住んでいます。
プラーク1mgの中には約10億個の細菌が住んでいます。1g中には、約10兆・・・
怪我して血が出ちゃった!バイ菌はいっちゃう~どころの騒ぎではないはずです。
歯周病で破れた血管から色んな細菌が体内に侵入します。
人間の組織や臓器に害のある細菌もいるので、体全体に悪影響を及ぼします。
「歯周病は万病の元」なんて言われる理由です。
歯茎からの出血は歯周病が悪化しはじめる危険信号です。
歯周病の原因になる菌は何種類もいますが、その代表格がジンジバリス菌※です。
※プロフィロモナス・ジンジバリス
この細菌は、普段はおとなしい常在菌です。
どちらかと言えば空気が嫌いなので、引きこもりがちに狭い隙間に隠れて、ひっそりと生きています。
歯磨きの脅威におびえながら、自分たちが生活しやすい環境を少しずつ作って暮らしています。
この時点では特に悪いことをするわけでもない、ただの細菌Aです。
ところが、歯茎から血が出ると状況は一変します。
ただの細菌Aだったジンジバリスは凶暴化します。
一気に毒を出しながら周りの組織を壊しはじめます。
ドンドン深くて空気の少ないところに入り込んでいきます。
ジンジバリスは、血を見ると見境がなくなる吸血鬼のような菌です。
血液によってジンジバリスが凶暴な吸血鬼になると、歯周病は急激に悪化していきます。
歯茎からの出血のサインを見逃さないでください。
どうして予防が大事なの?
ここまでのまとめ
- 歯周病は30歳以上の80%以上がかかる国民病
- 自覚症状が少なく知らないうちに進行していく
- 歯茎からの出血で急激に悪化する
- 一旦進行して周囲の骨が溶かされると元に戻らない
無自覚に進行してしまい、進行して骨を溶かされると元に戻りません。だからこそ、進行させない予防が肝心というわけです。
話も長くなってきましたので、休憩もかねておすすめの書籍をご紹介します。
天野ドクターの歯周病絵本 バイオフィルム公国物語
現役の大阪大学大学院 予防歯科学教室の教授の天野先生が書かれた本です。
普通の人には難しい予防歯科・歯周病・バイオフィルムのお話が絵本調で説明されていて、とてもわかりやすいと思います。
僕にとってもバイオフィルムコントロールのバイブル的な1冊です。
歯周病でお困りの方やバイオフィルムについてさらに理解を深めたい方に、ぜひ読んで欲しいと思います。
まとめです。
私は、歯周病予防で気をつけることは「いかに出血をコントロールするか」だと考えています。
出血さえさせなければ、急激な歯周病の進行は起こりません。
進行を止めることができれば、歯周病の維持・コントロールが可能だからです。
お口の中は放っておくと、ヌルヌルした感じになってきます。ちょうど排水口などがヌメってくるのと同じです。
先に書きましたが、そのヌメリの正体は細菌の共同生活体で「バイオフィルム」と呼ばれます。歯の表面に付着する歯垢(プラーク)もバイオフィルムです。バイオフィルムが成熟するまでの期間には個人差があります。その人の唾液の性質、歯磨きの精度、食習慣、免疫力等によって変化します。
一旦バイオフィルムが成熟してしまうと、歯ブラシなどで簡単に取り除くことができなくなります。成熟したバイオフィルムの内部では空気が遮断され、歯周病原菌の数が多くなって毒素を出し始めます。毒素は周囲の歯茎を傷つけ炎症を起こし、出血しやすくなってしまいます。
歯周病を予防するために
- 毎日のブラッシングや歯間ブラシなど、効率の良い方法を身につける
- 日々の習慣の中で悪い習慣を取り除く
- 定期的に歯科医院で専門的なバイオフィルムの除去をしてもらう
バイオフィルムが成熟する期間には個人差があるので、適切な間隔でバイオフィルムを除去しなくてはなりません。歯科医院で適切な間隔を診断してもらい、しっかり予防しましょう。
みなさんが歯周病の予防に少しでも関心を持っていただけたら嬉しいです。